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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)602号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人加藤定蔵の上告理由第一点について。

しかしながら、当該被告が原告に対し所有権移転登記抹消登記手続をなすべき義務を有する限り、この者のみを被告とした所有権移転登記抹消登記手続の請求を認容して差支えがなく、当該被告よりさらに所有権移転登記を受けた者があるからといつて、その者を共同被告としなければならないものではない。けだし、本件のような意思の陳述を為すべきことの判決は、判決の確定によつて意思の陳述をなしたものと看做されるのであるから(民事訴訟法七三六条)、かりに転得者の承諾がないためその抹消登記手続の実行が不可能となつても(不動産登記法一四六条参照)、そのために、当該被告のみを相手方とした本訴が不適法となるわけはないからである。よつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。

同上告理由第二点および第三点について。

しかしながら、所論の点について原判決のなした判断は、その所掲の証拠に照して肯認できるし、所論指摘の証拠についても、原判決は、それらによつては右事実認定を覆し得ない旨を判示しているのであるから、原判決に所論の違法はなく、論旨はすべて採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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